応募の概要
がん患者はがんに起因した疼痛や呼吸困難などの各臓器障害による症状だけでなく、がん治療に伴う副作用や合併症による消化器症状、皮膚障害、せん妄などにも悩まされます。これらに対し、症状を緩和するための支持・緩和医療が行われますが、この分野における国内のエビデンスを創出する研究が少なく、確立した診療指針はわずかです。また、このような症状の悪化は必ずしも生命予後に直結しないことが多いため、生活の質(Quality of Life:QOL)を低下させる症状や副作用について実態が把握できていない領域も多くあります。
様々な患者のニーズに対応できる支持・緩和医療を展開するには、科学的アプローチに基づくエビデンスを元にした診療指針が作成され、それを土台とした支持・緩和医療の均てん化を進める必要があります。支持・緩和医療の診療指針の実践は、QOLを維持しつつがん治療をスケジュール通りに完遂することを可能とし、結果としてがん患者の延命・治癒率の向上、就労・社会生活の支援につながり、がん対策基本計画に掲げられている「がんと共に生きる」社会の構築に貢献するものと考えられます。
支持・緩和医療領域においては、①皮膚・粘膜障害、②神経障害(末梢、中枢神経)、③がん治療と認知障害、および④がんと線溶・凝固異常など、治療法の開発が進んでいない合併症や副作用が多く存在します。また、支持・緩和医療はひとの不快な症状を対象とした医療であり、客観的な評価が難しい分野です。そういった中で、臨床研究開発を行うにあたっては、QOLや患者自身が実施する評価(Patient Reported Outcome:PRO)等を十分に駆使して、試験間での評価法の差を最小限にし、成果の比較ができるようにすることが重要です。いまだ治療法が確立していない臨床的課題に対し、支持・緩和医療における診療指針策定や改訂につながるエビデンスの創出を目指す臨床研究を募集します。また、いまだ実態の把握がなされていない領域については、まず良く練られた観察研究を実施して現状の問題点を抽出し、その後の臨床試験実施に結び付ける研究も公募対象とします。